アンカリング効果とは?
しっかり理解してマーケティングに活かそう!
アンカリングの意味とは?
アンカリング効果は心理学や心理学と経済学を融合させた行動経済学の世界では非常によく知られている人間の認知バイアスの一つになります。
認知バイアスとは簡単に言うと無意識の思い込みです。
行動経済学の世界でも扱われるように消費者の消費選択に大きな影響を与える効果です。
これは、先に提示されたものの数値や特徴が、アンカー(=基準)となり後に提示されるものの数値や特徴についての判断が本来、存在する地点よりも心理的に先に提示されたものに近づき合理的な判断ができなくなることです。
これまでの経済学は「人間はどんな状況下でも必ず合理的な判断をし、利潤を最大限求める(合理的経済人である)。」とされてきましたが、「人間は必ずしも合理的な判断をするわけではない(合理的経済人ではない)。」という仮定の下、誕生した行動経済学が示す効果の一つです。
先に提示する情報が「船舶が沖合で停泊する時に海底に沈めて、その場所から大きく動かないようにする『いかり(アンカー)』」のようであることからアンカリング効果と名付けられました。。
何のことなのかさっぱりわからないという方は以下に続く例をご覧ください。
アンカリング効果の例
アンカリング効果の例① ~計算~
とある実験では、ある集団をAグルーブとBグルーブの2つに分けてAグルーブには「1×2×3×4×5×6×7×8」を5秒以内に、Bグルーブには「8×7×6×5×4×3×2×1」を5秒以内に計算してもらいました。正確に言うと「計算してもらいました。」と言っても5秒以内にこれだけの計算はほぼ不可能なのでおおよその数値の予測をしてもらいました。
当然のことであるがAグルーブの計算式とBグルーブの計算式は数字の順序が反対になっているだけであり、答えは同じ40,320です。しかし、Aチームの中央値(数値を小さい順に並べた時、真ん中に来る数字)は512。一方Bチームの中央値は2,250であった。実に4倍もの差があったのです。
どちらも正解よりもかなり小さい数字が中央値になっていることは別として、Aチームは計算式の頭の方の1や2など小さい数字にアンカーが下ろされた結果、そのまま小さい数字に引きずられて、Bチームの中央値よりもはるかに小さく見積もってしまったのです。
アンカリング効果の例② ~通常価格と販売価格~
あるテレビショッピングを展開する会社は掃除機を販売しているとします。
ある日の生放送テレビショッピングでこの掃除機を紹介した時、いよいよ価格発表という時に最初、価格を通常価格の49,800円と発表しました。
しかし、そのあとに今日は利益還元祭なので「下取りで20,000円引き」で29,800円、と最終価格を実質的に下げました。
最初に通常価格49,800円を提示しておくことによって、49,800円にアンカーが下ろされます。
そして「下取り20,000円引き」で29,800円と先に提示した価格よりも安い価格を提示することで、最初から29,800円と提示するよりもなんとなく安く感じることがあります(もちろん個人差はありますが)。
これがアンカリング効果です。
ただやりすぎると消費者に手のうちがバレて、効果が半減してしまいますし、このセールが始まる前の8週間のうち半分にあたる4週間は少なくとも通常価格での販売実績がないと二重価格表示となり、景品表示法に触れ、消費者庁から指導を受けることになります。
景品表示法があまり関係のない個人がメルカリなどのフリマアプリであらかじめ売りたい値段よりも数百円程度、高めの値段を表示しておくのも買い手がある程度値下げ交渉に及ぶことがあり通常の買い物とは状況が少し異なるがアンカリング効果によるものもあります。
アンカリング効果の例③ ~ショーウィンドウ~
ショッピングモールの中にブティックなど衣料品店があるとします。ショーウィンドウには全身コーデのマネキンがあります。
しかしこのマネキンは店の中でも最も高価な洋服でコーディネートされています。
しかし店内に入ると決して安価ではないがショーウィンドウのマネキンの洋服に比べれば「相対的に安価」な洋服を中心に扱っているので、客は「思ったほど高くないじゃん」と思い買ってしまう人もいます。
これも最初に高価なものを見せることで「本当に買わせたい物」を安く感じさせることができます。ただこの場合はショーウィンドウに高価なものを置くのでそれを見て店内に入る行為すら敬遠させてしまうこともあります。
アンカリング効果の例④ ~限定~
ここまでは先に意図的に価格の高いものを提示してそのあとに相対的に価格の低いものを見せて安価であるかのように見せる手法として紹介しました。
しかしアンカリング効果は必ずしも二つの価格を並べなくてもよいのです。例えばスーパーの広告に「タマゴ1パック(10個入り)98円、限定先着100パック限り」があるとします。いまどきタマゴが98円はかなり安いですがこの「限定100パック」がさらに希少性をあおり「希少な物」というところでアンガーが下ろされ思考が固定化されてしまうのです。
また「限定先着」という言葉が消費者を焦らせ合理的な判断をさらに難しくさせています。「先着」だけでなく、「期間限定」や「地域限定」なども同じように効果があります。
アンカリング効果の応用
アンカリング効果の応用 ~会議~
アンカリング効果は商売をするときにしか使えないわけではありません。
例えば会議でも使えます。会議では「先に意見を出した方が有利」です。
必ずしもそうというわけではないが方向性が全く決まっていないような会議では最初に出た意見をもとに調整する意見がでることが多いです。
また最初に意見を出した人として評価もされます。
ただ他の人の意見を排除し健全な議論の場を壊してはいけません。
アンカリング効果の応用 ~恋愛~
合コンを行うとします。
合コンをやるときによく言うのは誘う同性は「自分よりもスペックが劣る引き立て役の同性を連れて行きなさい」とよく言いますが、これもアンカリング効果を期待してのものです。
失礼ではありますが、自分よりも美しくない、学歴が低い、身長低いなどアンカーとして成り立つこともあります。
もちろん見た目で判断しない人も少なからずいることに留意をしなければなりません。
フレーミング効果
アンカリング効果と類似するものにフレーミング効果というものがあります。
まずはこちらをご覧ください。
1.ある商品の説明で
【A】購入者の90%はまた買いたいと答えました。
【B】購入者の10%はもう買いたくないと答えました。
2.ある腫瘍を取り除く手術で
【A】成功率90%です。
【B】10人に1人は失敗します。
【A】と【B】で表現は違いますが内容は同じです。どちらがポジティブにとらえることができるかと言えば【A】の方がポジティブにとらえることができます。
アンカリング効果は「情報をどういう順番で提示するのか」が重要なのに対して、フレーミング効果は「情報をどのように提示するか」が重要なのです。
ほかにも飲食店で松竹梅の3コースを選ぶとき、真ん中の竹がよく選ばれるのもフレーミング効果によるもので、売り手は一番選ばれる竹を一番利益率が高くなるように設定していることが多いです。
まとめ
ここまでアンカリング効果の例と応用そしてアンカリング効果に類似したフレーミング効果について紹介しました。
アンカリング効果は簡単に言えば先に大げさなものを提示して驚かせ、そのあとに現実的なものを提示して交渉に及ぶものです。
うまく使えば商売や対人交渉もより上手に進めることができるかもしれません。